楽しくないのに「楽しい」と言ってしまう。共感していないのに、わかったふりをしてしまう。本当は違うと感じているのに、その場では口をつぐんでしまう。そんな経験はないでしょうか。
「息を吸うように嘘をつく」というと、多くの場合、平気で嘘をつく相手への批判として使われる言葉です。しかし私がこの言葉を通してお伝えしたいのは、他人の話ではありません。
自分自身に対して、無意識に嘘をついてしまうという話です。これは意志の弱さではなく、思考の仕組みの問題だと私は考えています。
この記事では、思考整理コンサルタントとして個人事業主の方の相談に向き合ってきた経験から、この状態を整理していきます。
その「嘘」は、いつの間にか始まっている
「息を吸うように嘘をつく」という言葉があります。ポイントは、「息を吐く」ではなく「息を吸う」という部分です。
息を吐くのは意識的な動作です。しかし息を吸うことは、考えなくても続いています。嘘も多くの場合、「ついている自覚」よりも先に、習慣として始まっています。
ここでいう嘘は、誰かを騙すためのものではありません。むしろ、自分自身に向けられた嘘に近いものです。楽しくないのに「楽しい」と言う。共感していないのに、わかったふりをする。本当は違うと思っているのに、黙っている。
こうした行動は、感情の弱さから生まれるものではないと、私は考えています。環境に適応するために身についた、思考の反応の一つです。
私自身、19年間金融システムの開発に携わっていた頃、「議論をスムーズに進めるため」に、本当は納得していない仕様にうなずいていたことが何度もありました。当時はそれを「協調性」だと思っていましたが、今振り返ると、あれも一種の「息を吸うような嘘」だったのだと思います。
なぜ、思考と自己認識はズレていくのか
「周りに合わせなければいけない」「目立たないようにしなければ」「わかっているふりをしなければ」。そうして作られた振る舞いは、いつの間にか「自分自身」だと思い込まれていきます。周囲と調和しているように見える一方で、本来の感覚は少しずつ置き去りにされていきます。
このとき起きているのは、思考と自己認識のズレです。これは弱さではなく、生き延びるために身についた、自然な思考の癖です。
個人事業主の方のご相談に携わってきた中で感じるのは、このズレに自分ひとりで気づける方は、実はそれほど多くないということです。
特に、周囲からの評価や成果に日々さらされている方ほど、本音よりも求められている反応を先に選ぶ思考の構造が、無意識のうちに強く定着していることが多いようです。「合わせるのが上手い」「気が利く」と評価されればされるほど、この構造は本人にも見えにくくなっていきます。
違和感を放置すると、心だけでなく事業にも影響する
その結果として、心や体に説明しづらい違和感が生まれます。好き嫌いがわからなくなる。感動しているはずなのに、どこか遠い。「自分が何を望んでいるのか」が見えなくなる、といった状態です。
大切なのは、その違和感を無視しないことです。違和感は感情ではなく、思考が現実や自分自身と噛み合っていないサインだからです。
「うん」「楽しい」と言った瞬間に、それは本当だろうかと一度、自分に問い直してみてください。理由が言葉にならないとしても、それは感情が麻痺しているのではなく、自分の思考に気づきにくくなっている状態かもしれません。
私が行っている思考整理では、心の整理・思考の整理・時間の整理・現実の整理という4つの工程で、こうしたズレに向き合っていきます。
この違和感は、放置していても消えるものではありません。事業を営んでいる方の場合、この違和感がそのまま事業判断のブレにつながっていくことが少なくありません。
自分の気持ちに正直になれない人は、自分が本当は何を望んでいるのかが、自分でもわからなくなっていきます。「これをやるべきだ」「これが求められている」という思考が先に立ち、自分は本当はどうしたいのか、という問いは後回しになりがちです。
事業の初期段階では、これは表面化しにくい問題です。むしろ「周りに合わせられる」「求められることに応えられる」という思考の癖は、一見すると強みのようにも見えます。
私自身、人に合わせることを優先して仕事を受け続けていた時期があります。本音がわからないまま「求められるから」で判断を重ねた結果、割に合わない条件で仕事を引き受けてしまったり、無理を重ねて体調を崩したりしたことがありました。売上自体はあったのに、なぜか満たされない、という虚無感に襲われたこともあります。
今振り返ると、あれは判断そのものが間違っていたというより、判断の土台になる自分の本音が、そもそも見えていなかったのだと思います。
自分の気持ちに正直でいられるかどうかは、単なる心の健康の話ではなく、事業の土台に直結する問題です。
10年以上、個人事業主の方のご相談に携わってきた中でも、自分の本音がわからないまま事業判断を重ねてしまっている状態には、何度も出会ってきました。
そしてこのズレは、一度や二度の気づきでは根本から変わらないことがほとんどです。私は繰り返されてきたパターンの起点を「分岐点」と呼んでいますが、そこまで遡って初めて整理できることが多い、というのがこれまでの実感です。
私が行っていること、そしてその先へ
自分の気持ちを本当に理解できるのは、最終的には自分自身だけです。誰かに指摘されても、それに気づけるかどうかは自分次第だからです。
今の自分の反応は本音だろうか。このズレはいつ頃から始まっただろうか。今の事業の判断は、本当に自分がしたい選択だろうか。こうした問いを、時々でいいので自分に向けてみてください。
無意識に続けてきた思考の癖は、自分ひとりでは見えにくいものです。私が行っているのは、嘘をやめさせることではありません。なぜその考え方が必要だったのか、どこからズレ始めたのかを、対話を通じて一緒に整理していく作業です。
「少し立ち止まって、この違和感と向き合ってみたい」という場合は、単発セッション(90分)で、今目の前にある判断や感覚を整理することができます。
一方で、「これは今回だけの話ではなく、事業判断も含めてずっと繰り返してきたパターンかもしれない」と感じられた場合、それは分岐点まで戻る必要があるサインかもしれません。継続コース(5ヶ月)では、そうした繰り返しのパターンの起点まで、時間をかけて向き合っていきます。
サービスの選び方に迷う場合は、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。
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※心や体の不調が強く続く場合は、思考整理と並行して、医療機関など専門家への相談も選択肢に入れていただくことをおすすめします。
