「今週中に、ここまで進めておいてください」。そう言われたタスクが、今週も手つかずのまま残っている。次のセッションの日が近づくたびに、胃のあたりが重くなる。できなかった理由を説明する言葉を、頭の中で先に用意してしまう。そんな経験は、ありませんか。
コンサルティングを受け始めたときは、状況を良くしたかったはずです。それなのに今は、「疲れた」「逃げたい」「辞めたい」という言葉のほうが先に浮かんでくる。そして次の瞬間、「動けていない自分が悪いのだ」と、自分を責めてしまう。
良くなるために始めたことで、自分を傷つけている。この記事は、辞めるべきか続けるべきかを判定するためのものではありません。その手前で、自分が今何に疲れているのかを整理するための記事です。
やるべきことは分かっているのに、手が止まる
日曜の夜、パソコンを開きます。共有されているタスクリストを表示すると、先週と同じ項目が同じ場所に並んでいる。チェックボックスは、ひとつも埋まっていません。
チャットには、コンサルタントからのメッセージが届いています。悪意のある文面ではありません。むしろ、励ましてくれている。それなのに、既読をつけることができない。開いてしまえば、返事をしなければならないからです。
「何をすればいいか分からない」わけではありません。やるべきことは、はっきり示されています。むしろ、示されすぎているくらいです。それなのに、最初の一手が動かない。ノートを開いて、閉じる。検索窓に「コンサル 辞めたい」と打ち込んで、結果を見ないままタブを閉じる。
そして、こう考えます。「これだけの金額を払っているのに、動けていない自分が悪い」。
今この場で、辞めるか続けるかを決めなくて大丈夫です
先にお伝えしておきたいことがあります。
今日、結論を出す必要はありません。辞めるか続けるかという判断は、疲れきった状態で下すには重すぎます。判断の精度は、その人の状態に左右されます。眠れていないとき、追い詰められているとき、私たちは選択肢を二つしか見つけられなくなります。続けるか、辞めるか。本当はその間にいくつも段階があるのに、視野が狭くなっているときには見えません。
そして、辞めたいと感じたときに最初に確認したいのは、そのコンサルティングが自分に合っていないのか、それとも今の自分に必要な支援の種類が違っているのか、ということだと私は考えています。
この二つは、似ているようで別のものです。前者なら相手を変える話になりますが、後者なら、誰に頼んでも同じことが起こります。ここを分けずに辞めてしまうと、次の場所でも同じ疲れ方をすることがあります。
「動けていない」と「自分が悪い」は、別のことです
ここで一度、立ち止まっていただきたいことがあります。
動けていないという事実と、自分が悪いという判断は、本来は別のものです。
事実はひとつしかありません。タスクが手つかずである。それだけです。けれども、そこにどんな意味をつけるかは、いくつも選択肢があります。「今は優先順位が違うのかもしれない」「そもそもこの課題が自分に必要なのか分かっていない」「体力が落ちている」。どれも成り立ちます。
それなのに今、意味づけが「自分が悪い」の一択に固定されている。まず、そのことに気づいていただきたいと思います。
自分を責めることは、一見すると反省のように見えます。けれども実際には、原因を探す作業を止めてしまいます。「私が悪い」で説明がついてしまうので、それ以上考えなくてよくなるからです。責めている間、状況は動きません。
私もコンサルで消耗し、相談の場を報告の場にしていました
私自身、過去に圧迫感のあるコンサルティングを受けて、消耗した経験があります。
言われることは、いつも正しいのです。正しいからこそ、反論ができない。できていない自分だけが残ります。セッションのたびに宿題が増え、前回の未完了分が積み上がっていく。ある時期から私は、その時間を「相談する場」ではなく「報告する場」として捉えるようになっていました。報告できる材料を作るために動く。目的が、いつのまにか入れ替わっていたのです。
そのとき私が思っていたのも、まさに「自分が動いていないからだ」でした。今なら、そうではなかったと分かります。
もうひとつ、独立前に事務代行をしていた頃の話をさせてください。書類やデータを整理する仕事のはずなのに、作業をしていると、その方が何につまずいているのかが見えてくることがありました。処理の遅れている場所と、その方が判断を避けている場所が、きれいに重なるのです。表に出ている問題は結果であって、原因は別のところにある。この感覚が、私が思考整理という仕事に向かった原点になっています。
コンサルの課題に手をつけられないのは、順序が入れ替わっているからです
私は独立する前、19年間、金融系のシステム開発に携わっていました。この分野では、要件定義という工程を必ず通ります。何を作るのか、なぜ作るのか。それが決まらないうちは実装に入りません。ここを飛ばして手を動かし始めると、作業は進んでいるように見えるのに完成しない。手戻りが繰り返され、現場は疲弊していきます。作っている人の能力の問題ではなく、順序の問題です。
私はこの仕組みが、思考にもそのまま当てはまると考えています。
思考整理では、心の整理、思考の整理、時間の整理、現実の整理という四つのプロセスで進めていきます。順番に意味があります。心が整理されないまま思考を扱おうとしても、思考は正しい位置に戻りません。思考が整理されないまま予定を組んでも、その予定は実行されません。
手が止まっている方の多くは、後半の二つだけを動かそうとしている状態にあります。期限が決まっていて、やることも決まっている。けれども、その手前にある「自分は今どう感じているのか」「これは本当に自分がやりたいことなのか」が置き去りになっている。この状態で実行だけを進めようとすると、動かないのが自然だと私は考えます。
独立してから10年以上、個人事業主の方の現場に関わってきました。その中で、行動が止まっている方の多くは、怠けているわけではありませんでした。むしろ真面目で、責任感が強い方がほとんどです。真面目だからこそ、渡された課題を疑わずに引き受け、できない理由を自分の内側だけに探してしまう。この仕組みが、自分責めを生んでいます。
コンサルが合わないのは、相手の問題でも自分の問題でもありません
ここで、誤解を避けるために書いておきたいことがあります。
コンサルティングという言葉が指す関わり方は、実際にはかなり幅があります。戦略を一緒に設計するもの、実行を管理していくもの、専門知識を提供するもの、判断の壁打ち相手になるもの。同じ名前で呼ばれていても、中身も、想定している受け手の状態も違います。ですから、コンサルティング一般について良い悪いを言うことには、あまり意味がないと私は考えています。
強く背中を押されることで前に進める方も、確かにいます。方向がすでに定まっていて、あとは実行するだけという段階にいる方にとっては、期限を切って管理してもらう関わり方が最も効率的な場合もあります。私自身、そういう支援が必要な時期もありました。
問題は、良し悪しではなく、今の自分の状態と支援の種類が噛み合っているかどうかです。土台が整っていない段階で実行支援を受けると、どれだけ内容が優れていても、受け取る側が消耗します。逆に、方向が定まっている人が整理ばかりしていても、前に進みません。
そしてこの噛み合わせは、外からは分かりにくいものです。支援する側も、目の前の方が「整理が先に必要な段階」にいるのか「実行を押してほしい段階」にいるのかを、最初から見抜けるとは限りません。ですから、噛み合っていなかったとしても、それは誰かの落ち度というより、確認されていなかったというだけのことが多いと感じています。
コンサルを辞めたいと感じたとき、その気持ちの中身を分けてみる
では、実際に何を確認すればいいのか。
「辞めたい」という言葉は、ひとつに見えて、中身が混ざっています。私が対話の中でよく分けているのは、次のようなものです。
課題の内容そのものに納得できていない。やる意味が腑に落ちないまま、指示されているから取り組もうとしている。この場合、動けないのは当然です。納得していないことを実行するのは、想像以上にエネルギーを使います。
できていない自分を見られることが苦しい。課題自体には納得しているけれど、報告の場が評価の場になってしまっている。この場合、辞めても課題は残ります。変えたいのは内容ではなく、関わり方です。
- コンサルタントとの相性が合わない
-
話し方、詰め方、期待のかけ方が、自分の消耗の仕方と噛み合っていない。相性は能力とは別の話なので、優秀な方であっても起こります。
- 今の自分には、実行より整理が必要だと感じている
-
何をするかより、なぜするかが定まっていない。この場合、支援の種類そのものが違っています。
- そもそもコンサルティングとは別の場所に原因がある
-
体調、家庭の状況、他に抱えている責任。これらは、コンサルティングを辞めても解決しません。
多くの場合、これらは複数が重なっています。ですから、どれか一つを選ぶ必要はありません。「どれが一番大きいか」を見るだけで十分です。
あわせて、もうひとつ分けておきたいものがあります。辞めたい、逃げたい、休みたい。この三つは、同じ気持ちのように扱われがちですが、性質が違います。辞めたいは判断です。逃げたいは、限界を知らせる感覚です。休みたいは、回復の要求です。逃げたいと休みたいが強いときに辞めるという判断だけを下しても、疲れは残ったままになります。
このうち「休みたい」については、少し補足させてください。
辞めるか続けるかという二択で考えていると、休むという選択肢が視野から消えます。けれども実際には、その間にいくつも段階があります。次の一回だけ日程を後ろにずらす。しばらく課題の量を減らしてもらう。数週間の中断を挟んで、そのあいだに立て直す。こうした相談ができるかどうかは、契約内容と相手次第ですが、伝えてみないことには分かりません。
そして、伝えること自体をためらう方が多くいらっしゃいます。「休みたいと言ったら見放される」「やる気がないと思われる」。そう感じて、限界まで言えないまま辞める。私自身がそうでした。
けれども、支援する側の立場から申し上げると、疲れていることを早めに伝えていただくほうが、はるかに助かります。動けない理由が分からないまま課題を出し続けるのは、支援する側にとっても手探りだからです。「今は手が回っていません」の一言があるだけで、進め方を変えられることがあります。
辞めると決める前に、一度言ってみる。これも選択肢のひとつだと私は考えています。
眠れない、食べられない、朝起き上がれない
もし、こうした状態が数週間にわたって続いているなら、思考の整理よりも先に、医療機関にご相談ください。
心身の状態が下がっているときは、どんな整理も入っていきません。考えがまとまらないのは思考の問題ではなく、体の問題であることがあります。判断の材料が揃わない状態で重い決断をするのは、避けたほうがいい選択です。
まず休むこと。これは後回しにされやすいのですが、いちばん確実な選択肢だと私は考えています。
契約が残っている場合に、確認しておきたいこと
辞めることを考え始めたとき、契約期間が残っているケースがあります。ここは感情とは別に、事実を確認しておいたほうがいい部分です。
まず、契約書または申込時の規約を手元に出して、解約に関する条項を読んでください。期間途中での解約が可能か、その場合の費用はどうなるか。書面がない場合は、申込フォームの控えやメールのやり取りを確認します。
そのうえで、疑問が残る場合や、内容に納得できない場合は、消費生活センターにご相談いただくのが確実だと考えます。お住まいの地域の窓口につながる消費者ホットライン(188)があります。契約の有効性や返金の可否といった判断は、私の専門ではありませんので、こうした窓口や、必要に応じて弁護士などの専門家にご確認ください。
私がお伝えできるのは、順序についてだけです。感情が高ぶった状態で解約の連絡をしてしまうと、あとから条件を確認したときに不利になっていることがあります。先に条件を確認し、それから伝える。この順番のほうが、自分を守れます。
先に整理したい、二つのこと
状態が保たれている場合、私が実際に対話の中で最初に扱うのは、心と思考の二つです。
まず、心の整理です。今感じている疲れを、良い悪いの判断を挟まずに、そのまま書き出します。「疲れた」「怖い」「悔しい」「見捨てられそうで不安」「本当は最初から乗り気じゃなかった」。出てきた言葉を、否定しない。
ここで多くの方が、「こんなことを思うなんて甘えだ」と、自分で消してしまいます。消してしまうと、材料がなくなります。材料がなければ、整理はできません。人に見せるものではないので、体裁は考えなくて大丈夫です。
次に、思考の整理です。渡されているタスクをすべて書き出したうえで、一つひとつに「これは誰の言葉か」というラベルをつけていきます。コンサルタントから言われたこと。以前どこかで学んだこと。周囲がやっているから、と思っていること。そして、自分が本当にやりたいと思っていること。
この作業をすると、多くの場合、リストの大半が自分以外の言葉で埋まっていることに気づきます。動けなかったのではなく、自分のものではないことを動かそうとしていた。この違いは、とても大きいものです。
そして、自分の言葉として残ったものが一つでもあれば、そこから時間と現実の整理に進めます。残らなかったとしても、それは失敗ではありません。今は自分の言葉を持てていない時期だと分かった、というだけのことです。分かったなら、次に確認すべきことも変わります。
コンサルを変えても同じ壁が現れる場合
順序を戻すだけで動き出せる方もいます。一方で、しばらくすると同じ状態に戻ってしまう方もいます。
コンサルタントを変えても、講座を変えても、環境を変えても、同じ壁が現れる。この場合、原因はもっと前にあります。
私はそれを分岐点と呼んでいます。今のパターンが繰り返されるようになった、その起点です。「頼まれたら断れない」「評価されないと不安になる」「自分で決めることを避けてしまう」。こうした反応が始まった場所には、たいてい理由があります。
ここは、一度や二度の対話で辿り着ける領域ではありません。時間をかけて遡る必要があります。ただ、繰り返しに心当たりがある方は、今の疲れが今回のコンサルティングだけの問題ではない可能性を、頭の片隅に置いておいていただければと思います。
自分に問いかけてみたいこと
最後に、静かなときに自分に向けてみていただきたい問いを、いくつか置いておきます。
この疲れは、いつから始まりましたか。最初から重かったのか、途中で変わったのか。変わったのだとしたら、その前後で何があったか。
今のタスクリストは、誰の言葉でできていますか。指示された内容と、自分が本当に必要だと感じている内容は、どのくらい重なっていますか。
もし、誰からも何も言われない一週間があったとしたら、あなたは何をしますか。何もしないという答えが出てきたなら、それは疲労のサインかもしれません。何かが浮かんできたなら、それが今いちばん近い場所にある、あなた自身の言葉です。
そして、今いちばん強いのは、辞めたいでしょうか。逃げたいでしょうか。休みたいでしょうか。
よくいただくご質問
- 契約期間の途中でも、相談していいのでしょうか
-
はい、構いません。ただし、私に相談する前に、まず今のコンサルタントに一度伝えてみることをおすすめしています。進め方を変えるだけで解決する場合があるからです。それでも変わらない、あるいは伝えること自体が難しいと感じる場合に、外部の視点として使っていただければと思います。
- コンサルを辞めたあと、また別のところに頼むべきでしょうか
-
すぐに次を探す必要はないと考えています。疲れている状態で次の支援先を選ぶと、同じ基準で選んでしまいがちです。まず、今回何が噛み合わなかったのかを言葉にする。それができてから探すほうが、選ぶ精度が上がります。何も受けない期間があっても、事業は止まりません。
- ただ疲れているだけで、続ければ結果が出るのではないでしょうか
-
その可能性はあります。実際、山を越えて進み始める方もいらっしゃいます。見極めの目安として私が見ているのは、疲れの種類です。進んでいる実感があるうえでの疲れなら、続ける価値があると考えます。何も進んでいない感覚のまま消耗が続いているなら、一度止まって確認したほうがいいと考えます。
- 思考整理のセッションでは、やるべきことを教えてもらえますか
-
やることのリストをお渡しする形ではありません。今どこで止まっているのかを一緒に確認し、ご自身が納得できる順序を見つけていく対話です。土台が整ったあとに、必要な行動が見えてきます。指示が欲しい段階の方には、別の支援のほうが合う場合もあります。
- 今のコンサルティングを続けながら、相談することはできますか
-
できます。どちらかを選ぶ必要はありません。実際、今の支援を続けるという結論になる方もいらっしゃいます。
「逃げたい」は、間違った感覚ではありません
逃げたいと感じるのは、あなたが弱いからではありません。合っていない環境に置かれ続けたときに、正しく反応しているだけだと私は考えています。むしろ、その感覚が働かなくなるほうが危険です。
そして、支援を受けるという選択肢は、次にやることを指示して管理してもらう形だけではありません。今どこにいるのかを確認するところから始める形もあります。やることを増やすのではなく、先に土台を整える。整ってから、必要なことに手をつける。私が思考整理という形でお引き受けしているのは、後者です。
続けるにしても、辞めるにしても、その判断は今日でなくて構いません。判断の前に、現在地を確認する時間があっていいはずです。
もし一人で整理するのが難しいと感じていらっしゃるなら、30分の無料相談をご利用ください。今の状況を伺ったうえで、何から整理していけばいいのかを一緒に確認します。その場で何かを決めていただく必要はありません。今受けているコンサルティングを続けるという結論になっても、まったく問題ありません。話すことで、自分が何に疲れているのかが見えてくることもあります。
