「発信をしているのに、なぜか反応がない」「同業者は多いのに、自分の強みがうまく言葉にならない」。
そう感じたまま日々の業務を続けている個人事業主の方は、決して少なくないと私は感じています。今回ご紹介するのは、開業から約1年、集客がほぼない状態で単発セッションにいらしたAさん(仮名)の事例です。
「ターゲット」という言葉を軸にご自身のビジネスの核心を掘り下げていったプロセスと、その半年後に起きた変化についてお伝えします。
「可もなく不可もなく」なHPと、曖昧な申し込み導線
Aさんは、人と深く関わる個別のご相談を軸にしたサービス業を営まれていました。SNSもHPもすでに運用されており、発信を止めていたわけではありません。それでも、開業から1年が経つ頃には、新規のお問い合わせがほとんどない状態が続いていました。
私が最初にHPを拝見して感じたのは、「悪くはないけれど、ここに頼みたいと思わせる決め手がない」ということでした。文章も体裁も整っているのに、良くも悪くも一般的な内容にとどまっている。加えて、申し込みまでの導線もやや曖昧で、興味を持った読者がどこから相談すればよいのか、迷う設計になっていました。
同業他社が多い業界だったこともあり、Aさんご自身も「売れているサイト」「フォロワーの多いアカウント」を参考にしながら発信を組み立てている状態でした。
なぜ発信はブレるのか
私は思考整理コンサルタントとして独立する前、19年間、金融系のシステム開発に携わってきました。システムの世界では、情報を正しい構造で配置しないと、どれだけ機能を追加しても全体が動かなくなります。この感覚は、独立後10年以上、1,000名を超える個人事業主の方と対話を重ねてきた中でも、繰り返し実感してきたことです。
発信やHPがブレる根本の原因は、多くの場合「誰のために、何のために届けたいのか」という一点が曖昧なまま、表現やデザインといった表層から手をつけてしまうことにあると私は考えています(この点についてはコンサルや講座を受けても結果が出ないのはなぜ?でも詳しくお伝えしています)。
Aさんの場合も同じでした。同業他社の見せ方を真似ること自体は自然な行動ですが、そこで再現できるのは表面の形だけです。本当に差別化になるのは、「この悩みを抱えた経験があるからこそ、あなたを支えられます」と言い切れる、ご自身にしか語れない立ち位置です。私はこれを、わかりやすく「ターゲット」という言葉でお伝えしています。
単発セッションで行った、たった一つの整理
今回のセッションでは、まず「誰のために、何のために届けたいのか」を明確にすることを最優先に置きました。屋号やサービスのゴールについて、一度出していただいた回答をさらに「なぜ、そう言えるのですか?」と繰り返し問い直していく、対話形式の構造整理です。
Aさんは「え、さらに掘るの?という気持ちもあったのですが(笑)、それをすることで、なぜ自分のサービスがターゲットに合致するのかにつながりました」と振り返っています。
ターゲットが自分の言葉になったことで、その後の優先順位もはっきりしました。私からは、HPからのブログ経由での集客を軸に据え、インスタグラムはその補強として位置づけるという順序でお伝えしました。手を広げすぎず、まず土台となるHPとブログの言葉を整えることが先だという判断です。
なお、こうした「誰かの見せ方を真似てしまう」「発信がブレる」というパターンは、一度きりの出来事ではなく、繰り返し起こりやすい思考の癖であることが多いという場合もあります。今回は単発セッションでの整理でしたが、そのパターンがどこから始まっているのかまで遡って扱いたい場合は、継続的な対話の中で見えてくることもあります。
ターゲットという一点を、ご自身の言葉で言えますか
ここまで読んでくださった方に、いくつか問いを置いておきます。
- ご自身の発信は、誰のために、何のために書かれていますか
- 同業他社の見せ方を参考にする前に、自分だけが語れる経験について考えたことはありますか
- 今のHPを見た読者は、「ここに頼みたい」と思える決め手を見つけられるでしょうか
すぐに答えが出なくても構いません。まずは、こうした問いを自分に向けてみるという選択肢もあります。
半年後に起きた変化、そしてご相談の入口について
Aさんは単発セッションを終えたあと、ご自身でHPとブログの言葉を整え直していかれました。そして半年後、HP経由で新しいお問い合わせが入り、成約につながったとご報告をいただいています。すべての方が同じ結果になるとは限りませんが、Aさんの場合は、ターゲットという一点を整理したことが、その後の行動の軸になったのではないかと私は考えています。
「発信しているのに反応がない」「同業他社との違いをうまく言葉にできない」——そう感じているなら、それはまだ「誰のために、何のために届けたいのか」を捉えきれていないサインかもしれません。一人で抱えたまま時間を重ねるより、まず一度、話してみるという選択肢もあります。
思考整理とは、「次に何をすべきか」が自分の中からクリアに見えてくる状態をつくることです。頭の中でからまった思考をひとつずつほどくことで、迷いが消え、自分の判断で動き出せるようになります。(思考整理とは?)
